2025年3月7日(金)~3月27日(木)  菅平高原スノーリゾート/富士見パノラマ

2025年3月7~9日 菅平高原スノーリゾート

2月は大きな競技イベントが続き、落ち着いてゲート練習に取り組むことが難しい状況が続きました。しかし、シーズン最後の合宿ではゲート練習を何度も繰り返すことができ、基本的な滑走技術を見直す良い機会となりました。

   

 

2025年3月13~16日 菅平高原スノーリゾート

【スマイルカップ2025参戦】

普段からゲート練習の機会を提供してもらっているスマイルスノーボードスクールが主催する「スマイルカップ」に参加しました。 スマイルカップは、ジュニアクラスからシニアクラスまで幅広い年齢層が参加する大会です。

音声合図と同時に開くスタートゲートは、ろう者選手にとってタイミングを取るのが難しい課題がありましたが、今回はデフリンピックと同様に赤・黄・青の順に点灯するランプを設置していただき、ろう者選手でもゲートが開くタイミングを把握できるようになりました。これにより、非常に貴重な練習機会となりました。ただし、ろう者選手の場合はタイミングがわずかにずれることが多く、スタートが遅れるケースも見られました。

また、前日のゲート練習では、赤コース・青コースを同時にスタートするパラレル競技形式での練習が行われ、異なるレベルの選手と競い合うことができました。特に、スピードのある選手と一緒にパラレル競技を行ったことは、選手にとって非常に貴重な経験となりました。

スマイルカップ本戦では、和田選手がオープン女子クラスで入賞を果たし、多くの聴者選手がひしめく中でトップレベルの競技力を発揮しました。 大会の雰囲気、PGSレースという普段の練習では経験できないパラレル競技、さらに強い選手との競い合いは、競争相手がいる中で自身の滑りを100%発揮するために気持ちを集中させる必要があり、心技ともに鍛えられる素晴らしい機会となりました。

 

2025年3月22~23日 富士見パノラマ

【ケスラーカップ2025参戦結果と今後の課題について】

年度明けに開催されるブルガリアネーションズカップ(4月5日・6日)に向けた事前調整を目的として、和田選手にケスラーカップ2025へ参戦してもらいました。また、昨年度(2023/2024シーズン)の同レースのタイムと比較し、今シーズンの強化事業を通じた成長度を客観的に把握する機会としました。

結果として、昨年度のタイムと比較して2本合計タイムで約5秒の短縮を達成し、これまでの強化合宿の成果が確実に表れていることを確認できました。特に、スタートから中盤にかけての加速と、ターン後半でのスピード維持が大きく改善されており、シーズンを通じた取り組みが実戦でも生かされていることがうかがえました。

一方で、今回のレースでは、スタート直後の数ターンにおいてライン取りがやや外側に膨らんでしまう場面があり、結果的に無駄な距離を滑ってしまう傾向も見られました。特に、インスペクション時に細かいライン設定をイメージできるかどうかが、滑走中のスムーズなターン展開に直結するため、今後の課題として引き続き意識して取り組む必要があります。

 

また、スタートゲートでの待機からスタートダッシュにかけての集中の持続についても、さらに精度を高めることが求められます。ブルガリアネーションズカップでは、世界各国から集まるハイレベルな選手たちと競り合うことになるため、レース当日のコンディション対応力や気持ちの切り替えを含め、実戦で力を出し切るための総合的な強化が必要です。

2025年3月26~27日 菅平高原スノーリゾート

【追加合宿】

今年度最後の追加合宿は、和田選手を対象に4月1日~4月8日にブルガリアで開催されるFISブルガリア選手権(国際大会)に向けた現地の競技環境を想定した練習を行いました。

合宿に参加した和田選手からは、「春特有の雪質に対応するための練習を繰り返し行うことができました。特にターン前半からしっかりとエッジングする感覚を身につけられたことが、自信につながりました。ブルガリア選手権では、これまで積み重ねてきた成果を発揮できるよう、全力で挑みます」とのコメントが寄せられました。

合宿初日(26日)のゲート練習では、春に向かう雪質の変化に対応しつつ、雪上環境の安定を図るため、スノーセメント(硫安)をコース上に散布しながら練習を実施しました。スノーセメントによって雪面を固めることで、アルペン競技におけるカービングターンの技術向上を目的としたトレーニングが可能となりました。

 

4月の雪は「春雪」と呼ばれ、ザラメ状に固まりやすく、独特の滑走特性を持つため、この雪質に対応する技術の習得が重要な課題でした。ゲート練習では、スピードの出るGS(大回転)のトレーニングに重点を置き、バーンコンディションに適応した滑走技術の向上を図りました。

和田選手の滑走については、スノーセメント散布後の硬化した雪面への対応が十分でなく、初日はバランスを崩す場面が見られました。しかし、ゲートの溝に合わせたライン取りの練習や、ターン前半での理想的なエッジングを意識したカービングターンのトレーニングを繰り返し行うことで、徐々に春雪や湿った雪への適応力を高めることができました。ブルガリア選手権では、同様の雪質(ザラメ状や湿った雪)が予想されるため、スノーセメントで固めたゲート練習は、現地の実戦を想定した有効な取り組みとなりました。

また、27日午後には最終的なフォーム確認のため、フリー滑走練習を行いました。フリー滑走では、ポールにとらわれずにターンの基本動作や体の使い方を見直すことを目的とし、特にターン前半からしっかりと内傾角を作る動作に重点を置いて取り組みました。和田選手は、ターンに入るタイミングでの上半身の安定と、雪面をとらえる感覚の向上を意識して滑走を重ね、徐々に安定した滑りが見られるようになりました。

合宿を通じて、和田選手はこれまで苦手としていた「雪質変化への適応」と「ターン前半からのエッジング強化」という課題に対して、確実に前進を見せました。特に、ゲート練習とフリー滑走をバランスよく組み合わせたことで、実戦で必要とされる総合的な滑走能力の向上が図れたことは大きな成果といえます。

今後は、ブルガリア選手権本番に向けて、合宿で身につけた技術を確実に発揮することが求められます。また、現地では気温や雪質の変化に応じた細かな対応が必要になるため、インスペクション時の観察力と戦略的な滑走プランの構築にも力を入れていきます。 今回の追加合宿で得られた経験を最大限に生かし、ブルガリアでの国際大会では自己ベスト更新を目指して全力で挑みます。

【成果】

  1. シーズン最後の合宿では、ゲート練習を集中して繰り返し行うことで、来シーズンに向けての課題探しと、基本的な滑走技術を見直す良い機会となりました。
  2. 和田選手がスマイルカップのオープン女子クラスで入賞することができました。多くの聴者選手がひしめく中でトップレベルの競技力を発揮できたことで、本人の自信が更に深まることができました。
  3. 和田選手がケスラーカップ2025で、昨年度の同大会のタイムと比較して約5秒の短縮を達成、今シーズンの強化合宿の成果が確実に表れていることを確認できました。

【改善点】

  1. 和田選手はバックサイドターンからフロントサイドターンへの切り替え時に後方にのけぞりすぎてしまう癖がまだ残っています。来シーズンに向けて、フォーム矯正に重点を置いた練習が必要です。

  2.  

    伊藤選手はフリースタイルボードからアルペンボードへの乗り換えを進めている段階です。引き続き、フリーラントレーニングを通して限界スピードが出せるトレーニングに取り組み、アルペンボードへ移行させていきます。

  3. 舛田選手はスタートダッシュで、競技タイム短縮を決定する初速度を出せないことが課題です。来シーズンは、スタート練習を繰り返し行い、スタート時の初速度を向上させることが必要です。

本事業は、独立行政法人日本スポーツ振興センターの競技力向上事業助成金を受けて実施しました。